東大の研究グループがメタボ症候群の発症メカニズムを解明
免疫の司令塔Tリンパ球が、内臓脂肪での“炎症”に関与
メタボリック症候群の発症過程では、肥大化した内臓脂肪の周囲に一種の“炎症状態”が起こることが知られてきている。東京大学の研究チームが、この炎症状態を詳細に顕微鏡で観察し、炎症の前の段階にCD8陽性Tリンパ球という免疫の司令塔が働いていること、またこのTリンパ球を抑え込むと内臓脂肪の“炎症状態”が生じないことがわかったと発表した。研究に当たったのは、東京大学大学院医学系研究科の永井良三教授らのチームで、研究内容は7月26日付の米科学誌ネイチャー・メディスン(電子版)に掲載された。
メタボの過程では、脂質の取りすぎなどにより、内臓脂肪の細胞一つ一つが最大で直径3倍くらいになるまで肥大する。肥大するとそこから出されるたんぱく質のサイトカインが信号となって、全身の血管内に血栓ができやすくなったり、炎症が起こりやすくなる。また、肥大した脂肪細胞の周囲にもマクロファージが集まって炎症が起きていると考えられている。
そこで、東京大学のチームでは、「実際に何が起きているかを特殊な顕微鏡(レーザー共焦点顕微鏡)を使って詳しく観察した」(同研究チームの真鍋一郎・特任准教授)。すると、肥大化した脂肪細胞の周囲では、確かにマクロファージがたくさん集まっていて、炎症が起きていることが画像でも確かめられた。さらに「脂肪細胞に周囲に集まっている物質を網羅的に解析したところ、マクロファージが集まるかなり以前に、免疫を司るリンパ球の一つ、CD8陽性Tリンパ球が増えていることがわかった」(真鍋准教授)。
そこで、研究チームではCD8陽性Tリンパ球の働きを抑える実験(Tリンパ球の抗体を投与してTリンパ球の働きを8割ほど減らす実験、およびCD8陽性Tリンパ球を全く作れないマウスを使った実験)をしたところ、いずれの場合もマクロファージの増加が大幅に抑制され、脂肪組織の炎症が抑えられた。このとき同時に、全身の糖代謝やインスリンの効きも良くなり、糖尿病の病態が改善した。つまり「CD8陽性Tリンパ球が、メタボリックシンドロームを引き起こす脂肪組織の炎症に必須であることがわかった」(真鍋准教授)。
CD8陽性Tリンパ球は、通常、細菌やウイルスのような異物が入ったときに感染してしまった細胞を攻撃して殺すために絶対に必要な細胞だ。そのため、脂肪細胞の炎症を抑える目的であっても完全に働かなくするわけにはいかない。「今回の研究を治療に生かす場合には、CD8陽性Tリンパ球のある働きだけを抑えるような方法が考えられる」(真鍋准教授)。そのためにも「何をきっかけにCD8陽性Tリンパ球が増えるのか、今後はその物質を特定する必要がある」(永井教授)。それができれば、メタボになっても糖尿病や動脈硬化の発症を抑えるような薬を開発できる可能性があるという。
(日経ヘルス、大屋奈緒子)
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